子どもの睡眠、足りていますか?柳沢正史先生の研究から親が知っておきたいこと
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「最近うちの子、なんかイライラしているな」「集中力がないのかな」──そんなことを感じたことはありませんか。
その原因が「睡眠不足」にある可能性、意外と見落とされています。筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)機構長の柳沢正史先生の研究や発言を手がかりに、子どもの睡眠について一緒に考えてみましょう。
柳沢先生ってどんな方?
柳沢正史先生は、覚醒を制御する神経ペプチド「オレキシン」を1998年に発見したことで世界的に知られる睡眠研究者です。現在は筑波大学に国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)を設立し、「なぜ眠るのか」「どれだけ眠るべきか」を科学的に解明しようとしています。
日本は世界的に見ても睡眠時間が短い国のひとつとされており、先生は日本社会の睡眠不足に強い問題意識を持っています。
睡眠は「貯金」できない
柳沢先生がくり返し強調するのは、「睡眠は貯金できない」ということです。
週末に寝だめをしても、平日の睡眠不足(睡眠負債)は返せない。先生が指摘するのは、「人は自分に必要な量以上には眠れない」という事実です。つまり、10時間必要な人が休日に12時間寝ようとしても、身体は必要以上には眠りにつかない。寝だめで借金を返すことは、構造的に難しいのです。
だからこそ、毎日コツコツと必要な睡眠時間を確保することが大切になります。
子どもは「眠い」と言わない
大人でも睡眠不足を自覚しにくいのに、子どもはさらにわかりにくい。「眠い」という言葉ではなく、イライラ・集中力の低下・感情の波・授業中のぼーっとした状態として現れることが多いのです。
「うちの子は元気に起きてるから大丈夫」と思っていても、それは睡眠不足に慣れてしまっただけかもしれません。先生も、慢性的な睡眠不足は本人が気づきにくいと指摘しています。
「足りているかな」の目安
ここからは、一般的な睡眠指針と私自身の解釈を交えてお伝えします。
米国小児科学会(AAP)などの国際基準では、子どもの推奨睡眠時間は次のように示されています。
| 年齢 | 推奨睡眠時間 |
|---|---|
| 6〜12歳(小学生) | 9〜12時間 |
| 13〜18歳(中高生) | 8〜10時間 |
一つの目安になるのが、平日と休日の起床時間の差。2時間以上ズレているようなら、平日は慢性的に睡眠が足りていないサインと考えられます。週末だけ昼まで寝ているとしたら、それは「好きだから寝ている」ではなく「足りないから眠り続けている」状態かもしれません。
眠気は2つの仕組みで決まる
睡眠の専門家が説明する「眠気のメカニズム」は、大きく2つの要素で成り立っています。
① 睡眠圧(スリーププレッシャー)
起きている間、脳にアデノシンという物質が蓄積されていきます。これが一定量になると眠気が来て、眠ると解消されます。
② 体内時計(サーカディアンリズム)
光などの刺激で調整される約24時間周期のリズム。夜になると眠るよう体が準備します。夜に強い光(スマホ・テレビなど)を浴びると、体内時計が「まだ昼だ」と錯覚し、眠りにつきにくくなります。子どもの就寝前のスマホ習慣が問題なのは、このためです。
「質を高めれば大丈夫」ではない
「睡眠の質を高めれば、短くても大丈夫」という考え方があります。ですが柳沢先生の研究スタンスは明確で、質を整えても、時間の不足は取り戻せないというものです。
質の改善は大切ですが、絶対的な時間が足りていなければ元も子もない。まず「時間を確保する」が先です。
睡眠を削って勉強するのは逆効果
テスト前に夜更かしして勉強する──受験生あるあるですが、これは逆効果です。
記憶の定着は睡眠中に行われます。学んだことを脳に「保存」するプロセスが、眠っている間に走る。睡眠を削って詰め込んでも、その記憶が定着しにくくなります。柳沢先生も、睡眠と学習・記憶の関係を研究の重要テーマとして位置付けています。
「睡眠時間を削ってでも勉強する」のではなく、「しっかり眠ることが勉強の一部」という発想の転換が、子どもにとって大切です。
寝る時間を少しずつ早める具体策
ここからは私の提案です。
急に「今日から9時に寝なさい」と言っても、体内時計はすぐに動きません。1週間に15〜30分ずつ就寝時間を早めるのが現実的です。
- 夕食後はリビングの照明を少し暗くする(暖色系の照明に切り替えるだけでも◎)
- 寝る1時間前はスマホ・タブレットを手放す(「ゲームのアラームを鳴らす」など仕組み化する)
- 朝起きたらすぐカーテンを開けて朝日を浴びる(体内時計をリセットする)
- 週末も平日と±1時間以内の起床時間を保つ(リズムのズレを小さく保つ)
子どもに「寝なさい」と言うだけより、家族全体で「夜の過ごし方」を整えるほうが続きやすいです。
眠りやすい寝室を整えるグッズ
先生が特定の商品をすすめているわけではありませんが、眠りやすい環境づくりの「助けになる」アイテムをご紹介します。効果には個人差がありますので、参考程度にご覧ください。
遮光カーテン
朝の光が早く入ると体内時計が早まり、夜の入眠もスムーズになります。反対に、しっかり遮光できる寝室は「眠るモード」に切り替える助けになります。
暖色系のナイトライト
寝る前に部屋全体の照明を落として、暖かい光のナイトライトに切り替えると、強い光の刺激を減らせます。
ブルーライトカットメガネ(夕方用)
スマホやゲームをどうしても使う場合のダメージを少し和らげる目的で。使わないに越したことはありませんが、一つの選択肢として。
アイマスク
寝室の遮光が難しい場合や、兄弟で部屋を共有しているご家庭に。
まとめ
柳沢先生の研究が示すのは、シンプルなことです。睡眠は削れるものではなく、毎日コツコツ確保するしかない。それは大人も子どもも同じです。
「眠れている」ではなく「必要な時間、眠れているか」を意識してみてください。子どもの小さな変化に気づく親の目が、睡眠環境を整える第一歩になります。
参考・出典
・筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)公式サイト https://iiis.tsukuba.ac.jp/
・American Academy of Sleep Medicine “Recommended Amount of Sleep for Pediatric Populations” aasm.org
・American Academy of Pediatrics Sleep Guidelines healthychildren.org
・NHKスペシャル「眠れない日本人」関連情報 nhk.jp

